
日本人の死生観が遺言を敬遠させる?
イギリスでは75歳以上の8割の方が紳士のたしなみとして、
遺言を遺す中、
日本では遺言は平成28年の死亡者約130万人、
公正証書遺言作成数約約10万5,000件、
自筆遺言検認数約17,000件と志望者のわずか1%しか遺されていません。
これは、どうしてなのでしょう。
皆さんは理由を考えたことはありますか?
私は、日本人の死生観が大きくかかわっていると考えています。
死というものは神道では穢れであると考えています。
また、死にまつわることを口にするのは縁起でもないと多くの日本人は感じています。
そういう言ことから死を連想させる「遺言」という言葉を無意識のうちに避けようとしているのではないでしょうか?
ただ、そういう方々は「遺書」と「遺言」の違いを勘違いされていると私は思っています。
実際、「遺書」と「遺言」の違いをご説明すると大抵の方は「遺言」を作成するとおっしゃいます。
「遺書」と「遺言」の違いとは?
遺書とは亡くなることを前提に親しい人に書き残す手紙です。
自殺を考えている方が遺すことが多いように思います。
なぜ、自分は死にたいと思ったのか。家族に向けて死ななくてならない無念の気持ちを書くこともあると思います。
書式に法的な決まりはなく、その代わり法的効力もありません。
それに対して遺言は、民法上は15歳以上の判断能力のある方なら書くことができるとしています。(民法961条、963条)
40歳でも100歳でも若年性アルツハイマーや痴呆などで判断能力がなくなれば、遺言は書けないことになります。
亡くなる方が書くのは「遺書」で「遺言」ではないのです。
また、遺言は自分の財産を遺留分を侵害しない限り自由に誰に遺すかを法的に決めることができます。
赤の他人でもお世話になった方に遺したいと思えば遺言に書き記せばいいわけです。
逆に親不孝な子供に財産を遺したくなければ、遺留分を考慮する必要はありますが、限りなく少なくすることも可能です。

遺言執行者存在の意義
ただ、遺言は遺しただけではなく確実に実行されないと意味がありません。
遺言通りに財産を分けてほしいと考えても、相続人が遺言をめぐって争いになると
財産の移転はなかなか進まないこともあるでしょう。
また、相続人が高齢・海外など遠方に居住している・仕事が多忙・事務手続きが苦手等の理由でなかなか進まないこともあります。
そんな時に遺言執行者に専門家を指定しておけば、遺言は確実にそして速やかに実行されることになります。
相続コンサルタントが遺言執行者として活躍することで遺言者の想いを確実に実行することが可能になるわけです。
まとめ
まず、ご相談者の想いをしっかりとヒアリングし、
遺言を遺した方がいいと判断した場合には、
士業とチームを組んで適切なアドバイスをし、
心配事を取り除いてください。
その際に、遺言は縁起が悪い、まだ死なないから書かなくていいといわれた場合は前述したとおりの説明をしてください。
その上で、遺言執行者として指名されるよう、時間をかけて信頼関係を築いていくといいでしょう。
文責:一橋香織(代表理事)